masuse's blog

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[エッセイ]超人と、善悪の彼岸について

 ニーチェは、超人とは、善悪を超えた存在だと言う。道徳を超克した者だと。
 しかし一方で、善悪の彼岸にも、道徳はあるという。超人はそれに従うと。その道徳とは、高貴さと誠実さ、友愛などだ。
 これは矛盾なのだろうか? 私はそうとは考えない。
 前者の道徳とは、「超自我」に基づくそれで、後者の道徳とは、「無意識的良心」に基づくそれなのだろう。
 超自我とは、親や世間の規範を自身に取り入れた良心のことで、無意識的良心とは、それ以前にあった、自身のなかの良心のことを指す (私は勝手に「根源的良心」と呼んでいるが)
 ニーチェのいう超人とは、前者の良心による道徳ではなく、後者の良心による道徳に従う者のことをいうのだろう。

 そして、後者の良心を発展させた先に、つまり、その延長線上に、ニーチェの言う、高貴さや誠実さ、友愛といった道徳があるのではないだろうか (それもある種の、自己実現なのだろう)

 そして、その良心を認知するには、神経症的であっても、離人症的であってもいけないだろう。

人間における偉大なこと、それは、人間が一箇の橋であって、目的ではない、ということだ。(ニーチェ)